KSTK

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「勾留」を「拘置」と言い換える新聞と常用漢字」について,「勾留は拘置といいかえてもよい。」(ナガブロ)とのご批判を頂きましたが,私の主張が『日常用語への攻撃』と評されてしまったのが少しショックだったので,弁明します。

日本の刑法・刑事訴訟法の文脈で「拘置」の術語を用いる場合,それは「刑の確定した者を刑事施設(刑務所)に拘禁すること」と定義してよいと考えます。そして,新聞報道において「拘置」の語が用いられる場合とは,すなわち,日本の刑法・刑事訴訟法の文脈であることから,「拘置」という語を用いるのは不自然・不正確であると思うのです。そして,そのように不自然・不正確な表現をあえてする必要があるのか,必要がないのならやめれば良いではないか,やめるのに障害があるのなら,取り除けば良いではないか,というのが私の主張です。

拘置は,「刑事施設に身柄を拘束し置かれること」と広く定義される場合もありますし(拘置所という場合の「拘置」は,厳密に言えばこちらの意味でしょう。),刑罰として身柄を拘束されること(既決拘禁)を「拘禁」と表現する場合に,それとの対比として,未決拘禁(刑事訴訟法上の「勾留」)のことを「拘置」と表現することもあるようです。

しかし,新聞が「拘置」と表現しているものはまず間違いなく,「勾留」のことであり,それを既決拘禁との対比という文脈で用いていることは稀です。それをあえて「拘置」と言い換える必要はなく,その障害となっているのが常用漢字であるならば,そこに「勾」の字をいれる方が良い,と思うのです。

仮に,「『勾留』を『拘置』と表現することも日常用語として許容すべき」としても,「勾留理由開示」という語すら「拘置理由開示」と言い換える必要があるでしょうか。これは喩えて言うなら,「用」も「使」も,『使用する』という意味であることを理由に,「引用」を,あえて「引使」と表現する必要があるのか,それを不正確であると指摘することは不適切なのか,ということです。

また,「拘置」を「勾留」へ言い換えることと,日常用語としても著作権法上の要件を充たした「引用」のみを「引用」と呼称することとの間には,質的な差があると思います。

日常用語としての「引用」には,著作権法上の術語である「引用」には含まれないものがあり,それにもかかわらず著作権法上の「引用」だけを(日常用語としても)「引用」と呼ぶならば,これまで日常用語としての「引用」として表現されてきた事象について適切な語を探さねばならないことになります。

これに対し,「勾留」と,新聞用語としての「拘置」とは,全く重なります。新聞用語としての「拘置」を,「勾留」と言い換えたところで,何の不利益・不都合・面倒も生じないのです。実際,新聞においても,「勾留」と表記する例が見られます。「取調室で殴り警官書類送検」(朝日新聞)を引用します。
県警によると、警部補は那覇署の捜査担当だった昨年7月3日、別の署の取調室で、盗みの疑いで逮捕、勾留中の男性(29)を取り調べ中、頭をファイルで殴ったり、肩をけったりして1週間のけがをさせた疑い。接見した弁護士に男性が訴えて発覚した。

追記(2008年7月2日)
ナガブロさんから,お返事となるエントリ「続・勾留は拘置といいかえてもよい」を頂きました。ありがとうございます。

ナガブロさんのほうでコメントするか,新しくエントリを立てるか,とも思いましたが,私の主張は「『勾留』を『拘置』と表現するなんて許せない!」というほど強い主張ではないので,ひっそりと追記することにします。

「拘置」が刑事訴訟法上用いられていないことは,ナガブロさんご指摘の通りですが,刑法と刑事訴訟法とは,密接に関連する実体法と手続法なので,そこでの概念・用語も基本的に共通したものが想定されるべきです。その意味で,私が「刑法・刑事訴訟法上」と述べたことは,適切であったと思っています。

また,『拘置理由開示は,あんまりだ』という意見に賛同していただいたことについては素直に嬉しいのですが,勾留理由開示は法的な手続の名称ですから、これを拘置理由開示といいかえることは許されません。とおっしゃる一方で,同じように法的な手続の名称である「勾留」の言い換えには強く反対されるのが,やや一貫しないように思います。


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続・勾留は拘置といいかえてもよい。
『勾留』派の弁明 (KSTK)に対し、先日のエントリを補足します。 KSTKさんは「日本の刑法・刑事訴訟法の文脈で「拘置」の術語を用いる場合」と書かれていますが、刑事訴訟法というのは余計でして、KSTKさんが拘置とされているものは刑法上の拘置にすぎないのではないか...

2008.06.25 22:03 | ナガブロ

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