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ネット上では高部眞規子判事(Wikipedia)に対する評価が非常に低いことを初めて知りました。正直驚いています。高部判事は,知的財産法におけるスペシャリストとして認知されている方で,論文も多く執筆されており,弁護士・研究者の方からの評価も非常に高い優秀な裁判官です。本来であれば,高部判事の判決なり論文なりを(つまりその唱える理論を)批評の対象とすべきなのですが,ある判決の結論を抽象化して批判する意見が多いようで気になったので,あえて「高部判事について」という形で,私の思うところを述べておきたいと思います。
ネット上での反応と法律関係者の評価
高部判事に対するネットでの評価を知ったきっかけは,携帯電話向けオンラインストレージサービス「MYUTA」に対する差止請求権不存在確認の訴えを棄却した東京地判平成19年05月25日(事件番号平成18(ワ)10166)についてのニュースです(ネット上での反応として,痛いニュース,はてなブックマークを参照)。
高部眞規子判事は,現役の裁判官の中では,三村量一判事(知財高裁)と双璧をなす知財のスペシャリストであると,私は認識しています。また,高部判事は,裁判のみならず,論文の執筆活動も盛んに行っている方で,最高裁調査官も務めておられたときの調査官解説を含め,それらは頻繁に引用されており(肯定的に引用される場合はもちろん,そうでない場合も,無視できない見解として扱われていると言えましょう),研究者・実務家からも高く評価されています。
高部判事が関わった裁判の中でも特に注目すべきは,『まねきTV事件の第一審決定』でしょう。ここでは,原告であるNHK,テレビ朝日、日本テレビ,フジテレビ,テレビ東京の差止請求を棄却する決定をしており(引用の決定はフジテレビに対するもの),この結論は知財高裁でも維持されています。その知財高裁の裁判長は,上記で「双璧」と表現した三村量一判事です。
高部判事が関わったその他の事件については,「高部眞規子判事のオシゴト ベスト10」(ナガブロ)にまとめられています(nagablo さんも,高部判事への評価の低さに困惑しておられるようです)。是非原文に当たって,その結論の当否だけでなく,理論構成に着目して欲しいと思います。高部判事の判決以外の「仕事」を見てみたいという方は,さしあたり,『特許判例百選 (別冊ジュリスト (No.170))
(第三版)』をご覧になるのがよいかと思います。
JASRAC御用達では,決してない。
次に,ナガブロさんでは直接触れられていなかった,高部判事の論文,中でもヒットワン事件判決(大阪地判平成15年2月13日判時1842号120頁)に関する高部眞規子判事の論文について,特に言及しておきます。
『ヒットワン事件』(『ヒットワン・通信カラオケ送致リース事件』とも)は,JASRAC(原告)が,カラオケスナックが,JASRACへ使用料を支払わないため,カラオケスナックが使用している機械について、リース業者(被告)に対し,再生ロックするようにとの請求を求めたものです。
リース業者(被告)は,いわゆる『カラオケ法理』を用いても,著作権侵害をしている者(=通常,差止請求をされる者)とはいえません。(結果的に)著作権侵害の手助け(幇助)をしているに過ぎないからです。それにも関わらず,大阪地裁は,リース業者に対する差止請求を認めました。つまり,JASRACの勝訴です。
しかし,高部判事は,「カラオケリース業者に使用禁止措置を命じた裁判例をめぐって」(AIPPI49巻4号290頁)において,このJASRAC勝訴の判決を批判しています。つまり,当たり前のことですが,高部判事は,JASRACの肩を持っている,『JASRACびいきの判事』というわけではないのです(なお,高部眞規子「著作権侵害の主体について」〔ジュリスト1306号114頁(2006年)〕も参照。この論文について触れたブログとして,『奥村徹弁護士の見解』,『企業法務戦士の雑感』があります)。
高部判事はネットを知らない?
今回話題になっている判決を見ても,一部の批判にあるような,『ネットに対する不理解』があるかどうかは,疑問です。例えば,ウェブサイト閲覧に伴ってディスクメモリに蓄積されるキャッシュは著作権侵害(複製権侵害)となるか,という問題があります。今回の判決には,これに関連する判示が見られます。
キャッシュについては,そもそも複製ではないとする見解もありますが,『EC電子商取引指令』(2003年)は,複製ではあるが,許された複製である(トラフィック軽減を唯一の目的として行われる一時的蓄積については複製権侵害ではない)という立場に立っています。上記引用部分も,このようなキャッシュの機能に着目したものと読めるのではないでしょうか。
高部判事のスタンス
高部判事の関係した判決や,論文を見ていると,判決では,あくまで『現行の著作権法に忠実な解釈論』を展開しつつ,論文では,『立法論まで視野に入れた提言』を行っている,と私は感じています。
今回問題となったオンラインストレージサービスについての判決も,著作権法に従ったならば致し方ない判決であったのではないでしょうか。この事件で争点となったのは侵害行為の主体は誰であるか,ということです。高部判事は,判決・論文において,その主体性を無限定に拡張すること,具体的には,いわゆる『カラオケ法理』の射程を広げることについて,否定的な態度を示されています。
そんな高部判事が出した今回の判決は,読めば分かる通り,事案を丁寧に分析して侵害を認めているのであって(つまり,事例判断に過ぎない),射程を無限定に広げるものではありません。この判決については,拙稿「オンラインストレージサービスを違法とした判決は正しい。」をご参照ください。
追記
「ストレージサービスは著作権侵害?」(gdgd日記)では,高部判事が関わった一太郎事件や,ローマの休日事件についても触れられています。特に前者はネットでの悪評の元となった判決ですが,KLEBERさんが指摘されているように,高部判事の関わった第一審判決が控訴審(知財高裁)で覆されたのは,第一審の理論がおかしかったと言うよりも,控訴審で新証拠が提出されたためであると,私は考えています。
ネット上での反応と法律関係者の評価
高部判事に対するネットでの評価を知ったきっかけは,携帯電話向けオンラインストレージサービス「MYUTA」に対する差止請求権不存在確認の訴えを棄却した東京地判平成19年05月25日(事件番号平成18(ワ)10166)についてのニュースです(ネット上での反応として,痛いニュース,はてなブックマークを参照)。
高部眞規子判事は,現役の裁判官の中では,三村量一判事(知財高裁)と双璧をなす知財のスペシャリストであると,私は認識しています。また,高部判事は,裁判のみならず,論文の執筆活動も盛んに行っている方で,最高裁調査官も務めておられたときの調査官解説を含め,それらは頻繁に引用されており(肯定的に引用される場合はもちろん,そうでない場合も,無視できない見解として扱われていると言えましょう),研究者・実務家からも高く評価されています。
高部判事が関わった裁判の中でも特に注目すべきは,『まねきTV事件の第一審決定』でしょう。ここでは,原告であるNHK,テレビ朝日、日本テレビ,フジテレビ,テレビ東京の差止請求を棄却する決定をしており(引用の決定はフジテレビに対するもの),この結論は知財高裁でも維持されています。その知財高裁の裁判長は,上記で「双璧」と表現した三村量一判事です。
高部判事が関わったその他の事件については,「高部眞規子判事のオシゴト ベスト10」(ナガブロ)にまとめられています(nagablo さんも,高部判事への評価の低さに困惑しておられるようです)。是非原文に当たって,その結論の当否だけでなく,理論構成に着目して欲しいと思います。高部判事の判決以外の「仕事」を見てみたいという方は,さしあたり,『特許判例百選 (別冊ジュリスト (No.170))
JASRAC御用達では,決してない。
次に,ナガブロさんでは直接触れられていなかった,高部判事の論文,中でもヒットワン事件判決(大阪地判平成15年2月13日判時1842号120頁)に関する高部眞規子判事の論文について,特に言及しておきます。
『ヒットワン事件』(『ヒットワン・通信カラオケ送致リース事件』とも)は,JASRAC(原告)が,カラオケスナックが,JASRACへ使用料を支払わないため,カラオケスナックが使用している機械について、リース業者(被告)に対し,再生ロックするようにとの請求を求めたものです。
リース業者(被告)は,いわゆる『カラオケ法理』を用いても,著作権侵害をしている者(=通常,差止請求をされる者)とはいえません。(結果的に)著作権侵害の手助け(幇助)をしているに過ぎないからです。それにも関わらず,大阪地裁は,リース業者に対する差止請求を認めました。つまり,JASRACの勝訴です。
しかし,高部判事は,「カラオケリース業者に使用禁止措置を命じた裁判例をめぐって」(AIPPI49巻4号290頁)において,このJASRAC勝訴の判決を批判しています。つまり,当たり前のことですが,高部判事は,JASRACの肩を持っている,『JASRACびいきの判事』というわけではないのです(なお,高部眞規子「著作権侵害の主体について」〔ジュリスト1306号114頁(2006年)〕も参照。この論文について触れたブログとして,『奥村徹弁護士の見解』,『企業法務戦士の雑感』があります)。
高部判事はネットを知らない?
今回話題になっている判決を見ても,一部の批判にあるような,『ネットに対する不理解』があるかどうかは,疑問です。例えば,ウェブサイト閲覧に伴ってディスクメモリに蓄積されるキャッシュは著作権侵害(複製権侵害)となるか,という問題があります。今回の判決には,これに関連する判示が見られます。
なお,原告は,本件サービスにおける複製は,一時的にユーザのパソコンや本件サーバにされるものであって,コンピュータのメモリ内に一時的に複製されるソフトウエアと同じ道理であり,物理的にも規範的にも,すべてユーザが行っているといえる旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(3))。しかしながら,そもそも原告の主張する一時的の意味が不明であり,一時的であれば複製権が制限される根拠を主張していない。そして,本件サーバにおける複製行為が本件サービスの中核をなしていることからすれば,上記主張は失当である。この部分は,あくまで著作権法の解釈の域を踏み越えず,「複製」と解さざるを得ないとしながらも(
一時的であれば複製権が制限される根拠を主張していない。の部分を参照),その複製の目的・意味を実質的に把握しているように思うのです。
キャッシュについては,そもそも複製ではないとする見解もありますが,『EC電子商取引指令』(2003年)は,複製ではあるが,許された複製である(トラフィック軽減を唯一の目的として行われる一時的蓄積については複製権侵害ではない)という立場に立っています。上記引用部分も,このようなキャッシュの機能に着目したものと読めるのではないでしょうか。
高部判事のスタンス
高部判事の関係した判決や,論文を見ていると,判決では,あくまで『現行の著作権法に忠実な解釈論』を展開しつつ,論文では,『立法論まで視野に入れた提言』を行っている,と私は感じています。
今回問題となったオンラインストレージサービスについての判決も,著作権法に従ったならば致し方ない判決であったのではないでしょうか。この事件で争点となったのは侵害行為の主体は誰であるか,ということです。高部判事は,判決・論文において,その主体性を無限定に拡張すること,具体的には,いわゆる『カラオケ法理』の射程を広げることについて,否定的な態度を示されています。
そんな高部判事が出した今回の判決は,読めば分かる通り,事案を丁寧に分析して侵害を認めているのであって(つまり,事例判断に過ぎない),射程を無限定に広げるものではありません。この判決については,拙稿「オンラインストレージサービスを違法とした判決は正しい。」をご参照ください。
追記
「ストレージサービスは著作権侵害?」(gdgd日記)では,高部判事が関わった一太郎事件や,ローマの休日事件についても触れられています。特に前者はネットでの悪評の元となった判決ですが,KLEBERさんが指摘されているように,高部判事の関わった第一審判決が控訴審(知財高裁)で覆されたのは,第一審の理論がおかしかったと言うよりも,控訴審で新証拠が提出されたためであると,私は考えています。
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マッキーファンクラブ
つうわけでもないんですが、そこはかとなく高部眞規子判事支持を匂わせております跳箱としてはrbw氏も隠れ眞規子ファンらしいと気づいた(と思い込んだ)ので、ここで一発コクっておこうかと。ええ、跳箱はマッキーファンです。悪いか?さて、先日のエントリにrbw氏がコメン
2007.06.09 23:58 | 跳箱
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