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株主に申し開きできない態度であると断じる町村教授のエントリ「Saizeriya:バカな高校生を引き寄せる愚かな店」について,私はむしろ株主には最も良く説明できる対応なのではないかと思うので,コメントします。
町村教授の見方
先ず,上記町村教授のエントリを一部引用します。
要するに、この種の脇の甘い行為をすると、一見良心的なようではあるが、実のところ詐欺的行為を助長するのであり、こういうのは詐欺の幇助罪になるのではないかという気さえする。この部分は法律家ジョーク(注)なのでコメントは省きます。
注:ジョーク,つまり町村教授も本気でサイゼリヤに詐欺罪の幇助犯が成立するとは考えておられないだろう,ということです。サイゼリヤには「共犯者」たる架空返金請求者の行為について故意が認められず,幇助犯が成立し得ないことは明らかです。「詐欺被害にあっても,会社の名誉を守るためなら仕方がない」という意識であれば故意(未必の故意)が認められるかも知れませんが,その場合は被害者たるサイゼリヤが法益侵害に同意していることになるため,そもそも詐欺罪が成立し得ないことになります。加えて,学説上,幇助犯の成立に歯止めをかけようという試みが多くなされています。教授も,そうした事情は分かった上で,サイゼリヤの行為の愚かさを象徴する意味において,
幇助犯になるのではないかという気さえする(強調筆者)と述べておられるのだと思います。「省く」と言いつつ,長々書きましたm(_ _)m
百歩譲っても無責任な対応であり、「返金はおわびの気持ちで始めたことなので、お客様の良心を信じるしかない」というのは株主に申し開きできない態度である。しかし,この部分については,また別の見方もできるように思います。
「謝ってしまう」という損害拡大防止策
つまり,専ら日本国内に店舗を設けている同社としては,日本では,『先んじて,大々的に謝れば,叩かれもせず,あるいは好かれる』という考え方に基づき,客離れ・不買運動・道義的な信頼の低下などによる損害を食い止め,会社の価値毀損を防ぎ,もって株主の利益を護る,という行為と見ることもできるからです。
例えば,むしろ遅きに失した感のある松下電器によるファンヒーター回収ですらも,NORDによる「2006年企業レピュテーション調査」(PDF)によれば,むしろ評価を挙げる要因になっており,他方,アルフレッド・N・シンドラー氏は,「日本ではまず謝るべきだった」と反省の弁を述べています(日経ビジネス2008年8月25日号)。後者の例についてコメントした落合弁護士の言葉は,実にシンプルで分かり易いものでした。
日本人のメンタリティ、カルチャーとして、確かにシンドラー会長が言うような面はあって、刑事裁判の場に限らず「謝る」ということを求められ、そういった姿勢が「赦し」にもつながって行く、そのようなプロセスを経て再び共同体(一種の観念上のものになると思いますが)の構成員として迎え入れられて行く、という側面があるような気がします。謝罪による防衛は二段構え
そして私は,今回のサイゼリヤの行為はそのような目的に担われたものであって,しかも奏功したのだろうと思います。
この架空返金請求の話題が報道されても,人心は「サイゼリヤ可哀想」という方向に向かいやすい(向かった)一方,「サイゼリヤは馬鹿だなぁ」という,少なからず存在する意見によっても,「そんな馬鹿なレストランで食べるのは止めよう」という方向へは向かいづらく,いずれにせよサイゼリヤは客離れを防ぐため有効な手立てを講じたものと評価できるように思うのです。
レシートを要求しない「ご時世」
なお,『年金支給漏れ問題』の時には,証拠(本件でいうところのレシート)がなければ支給できないということで,随分と批判がありました。
レシートなしでも返金に応じるというサイゼリヤの対応は,最善かつやむを得ないものだったように思います。
高校生のその後
ちなみに,架空返金請求をした高校生はサイゼリヤ側に弁償をしたようですね。「「ピザ食べた」と高3うそ=サイゼリヤから4000円−千葉」(時事ドットコム)を引用します。
ファミリーレストラン「サイゼリヤ」(埼玉県吉川市)が店舗で販売したピザの生地から有害物質メラミンが検出された問題で、千葉県八千代市の県立高校3年の男子生徒が実際にはピザを食べていないのに、市内の店舗に返金要求し、約4000円をだまし取っていたことが25日、分かった。
生徒は既に各店舗に謝罪し、返金。経緯を説明するため県警八千代署を訪問した。同署は立件を見送る方針。
立件を見送る方針とのことですが,裏付け捜査に費やされる膨大な資源が節約され,捜査によって関係者に大きな負担がかかることもなくなったということで,よいことだと思います。この高校生の更生を心から望みます。
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この意見に基本的に賛成で、私も同じ立場に置かれたら(許されるなら)同じ判断を下すでしょう。
サイゼリヤの場合、「実際に店を訪れた人に、比較的安価なピザ代を返す」ということですから、「店まで出かける手間」に比べて「嘘をついて得られる対価」が高くないということも、うまくいくであろうと予想される理由になるかと思います。町村氏が挙げていた牛肉の場合は、おそらくもう少し金額が高くて「嘘をつく人」が多かったのでしょう。
20年以上前だと記憶していますが、どこかの競馬場で順位の発表を間違えてしまい、当り馬券を捨ててしまったという人からクレームになり、押し問答の末「申し出があれば2万円を支払う」という決定をしたそうです。これがアナウンスされて、窓口には返金依頼が殺到し、公衆電話には「ここに来ると2万円もらえるぞ。家族全員連れてこい」という人がいたそうです。本当に大損した人はかわいそうですが。
企業にとって「お詫び」するケースというのは、普通、あまりないわけですから、そのような事態が生じたら、多少「やりすぎ」くらいにお詫びする方が、企業イメージを維持するためにはよい戦略だと言えるでしょう。
※冒頭のリンク先が "#more" になっていますね。
2008.10.27 22:43 URL | mohno #mQop/nM. [ 編集 ]
>mohno様
コメントありがとうございます。
私が挙げた例(ファンヒーターとエレベータ)はいずれも,謝罪したか否かに関わらずほぼ同額の損失(修理費等)が避けられないもので,落合先生の言葉を借りるならば,謝罪による「赦し」という観点からのみ論じたものでしたが,ご指摘の通り,返還する金額という要素も重要ですね。
牛肉の場合,ピザと違って「まとめ買いした」という技も使えそうですし。
リンクミスのご指摘もして頂き,ありがとうございます。
2008.10.28 20:58 URL | kiyosakari #- [ 編集 ]
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